エージェント Ⅱ
3
車に乗り込むと同時に発車する。
運転手さんだけかと思っていたら、相良さんも乗っていた。
「なんでお前も乗ってんねん」
「俺は個人的な用事があんたにあるんだよ」
「俺はあらへんけどなっ!」
この二人…歪みあってるのか、仲良いのか、よくわからないような言い争いをするなぁ。
ーーかと思うと、誰も話さなくなった車内。
「…あの人んことやろ」
先に口を出したのは星矢さん。
それもすごく、ゆっくりと、低い声で。
「絶対に会わせんへんで」
「んなの、わかってるし。お前だってアイツに会うつもりもないだろ」
「会ったら殴りそうやからな」
「殴り返されろ」
「本気で殴るわけないやん。ソイツに手を出したってバレたら、俺があの人に殴られるわ」
「だろうな」