エージェント Ⅱ
ヒューっと、息が詰まるかのようだ。
「あたし、ですか」
「そうや」
「なんで、あたしが…」
「トラブルメーカーの元姫が東から逃亡したって言うのがすぐ広まってん。俺らの界隈、東も西もトップの界隈っちゅうんは、情報が入るん早いからな。
だから迎えに行ったんや、美園ちゃんを」
あの日、
あの時、
あの雨の日。
あたしが西の街にたどり着いた時、星矢さんがいたのは、運命とか、必然とかではなくて、待ち構えていただけ。
ーーそんなこと、わかってた。
あれは偶然じゃないって、心の底では思ってた。
「逃げ出してきたトラブルメーカーの元姫と、連れ戻そうとするトラブルメーカー。
こんな混乱を利用するんは、この社会では当たり前や」
だから、あたしを利用した。
あたしがこの街に来なかったら、また違ってた。