エージェント Ⅱ
聴いたことのない声。
邪魔だとばかりに腕を引かれる。
その時に見えた、黒髪。
下を向いていた目線を上にあげる。
「お、やっと顔あげた。綺麗な顔してるんやから、下向いたったらあかんで」
「なっ…」
「おーーちょい待ち、電話や」
片方であたしの腕を掴み、もう片方の手で携帯を耳にあてる。
黒髪に、襟足に赤いメッシュをいれているこの男。
「ようやく見つけたでー!今からそっち戻るわ」
電話を終え、クルッとあたしの方へ振り向くと、笑顔を向けられた。
な、なに。
「よぉ、こっちまで逃げて来れたな。歓迎するで、新巻 美園ちゃん」
「なんで、あたしの名前っ…」
「知ってんで。あんたのことなら、なんでも」