エージェント Ⅱ
いつも通りシャワーを浴び、自分用のベッドに潜り込む。
とにかく何も考えたくなかった。
それなのに目を閉じると、昔の記憶が蘇る。
東の街での思い出。
楽しかった日々。
辛かった日常。
考えたくない、考えたくないって思えば思うほど、鮮明に蘇ってくる記憶。
「…美園ちゃん、寝た?」
「…………」
「まあ、ええ。俺の独り言や」
「…………」
「自分の人生を賭けられへんような奴が、この世界におったらあかん。
ーーこの世界は、一つの迷いが命取りやで」
「…………」
「…おやすみ」
星矢さんは、
あたしをどうしたいんだろう。
あたしは、どうしたらいいんだろう。