恋のカルテ
やがて次の駅に着くと、ホームには、担架を持った駅員が待ち構えていた。
私は心臓マッサージを続けながらその男性と一緒に電車を降りる。
でも、例の男の人は車内に残ったまま。
「それじゃあ、頑張って。ああそれと、くれぐれも殺すなよ、その患者」
ドアが閉まる間際、男の人はそういってニヤリと笑った。
「……な、なんなのあの人」
ふつふつと湧く怒り。
しかしそんな感情にかまけている暇はない。
確かに、この男性を死なせるわけにはいかないのだ。
やがて心拍が再開し、かすかに感じる脈を取りながら、私は救急隊員が到着するのを待った。