恋のカルテ

やがて次の駅に着くと、ホームには、担架を持った駅員が待ち構えていた。

私は心臓マッサージを続けながらその男性と一緒に電車を降りる。

でも、例の男の人は車内に残ったまま。

「それじゃあ、頑張って。ああそれと、くれぐれも殺すなよ、その患者」

ドアが閉まる間際、男の人はそういってニヤリと笑った。

「……な、なんなのあの人」

ふつふつと湧く怒り。

しかしそんな感情にかまけている暇はない。

確かに、この男性を死なせるわけにはいかないのだ。

やがて心拍が再開し、かすかに感じる脈を取りながら、私は救急隊員が到着するのを待った。

< 10 / 250 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop