恋のカルテ
「使わないって言ってるのに、母親がわざわざ送ってくるんだ」
「そうなんですか」
私の母もよく、食材や日用品などを送ってくれている。
東京に出てきてだいぶ経つのに、今も季節ごとに何かしら届けてくれるのだ。先生のお母様もきっと、先生のことをかわいくて仕方がないのだろう。
「優しいお母様ですね」
「どうかな。金はかけても、愛情はそそがない人だったから」
「また、そんなこといっちゃだめですよ」
照れ隠しなのだろうと思ってみると、先生は悲しげな顔をしていた。
「……すみません」
「なんで謝んの? 別にいいよ。母親っていっても、あの人は継母なんだ。ちみに腹違いの弟がひとりいる」
「そうなんですね」
「まあ、いろいろあってね。……家族を持つことには何の憧れもない。だからオレは本気の恋愛なんてしない。なんの保証もない、未来もない。そんなものに振り回されるなんてばかげているだろ。男女のつながりなんて、体だけで十分なんだよ」
圭人と別れたばかりの私は、先生の言葉を全てを否定することができない。けれど、先生は本当にそれでいいと思っているのだろか。
もしそうなら、こんな悲しい顔をしないはずだ。