恋のカルテ
「関係者……、では乗ってください」
「はい」
救急隊員は救急車の中でバイタルを測り、心電図モニターを付ける。
するとその画面には、異常を示す波形がゆっくりと映し出された。
「……房室ブロック」
しかも重度の。
これではどうにか再開した心拍も、いつ止まってしまうか分からない状況であることには間違いはない。
おそらくペーシングが必要になる。一刻を争う緊急事態だ。
搬送先はあの男の人が指示を出したと言っていた。だからおそらく、そこへと向かっているのだろう。
でも、救急車は渋滞にはまってノロノロ運転の状態。
「もっと急いでください」
「急いでますよ。でも、これが都内の現状です」
「……すみませんでした。知りもしないで、私」
「いえ、いいんです。こればかりは誰のせいでもありませんから。それでも今回は、受け入れ先が決まっているだけまだいい方ですよ。ここから受け入れてくれる病院を探してなんてしていたらそれこそ助からない」
そう言って救急隊員は小さなため息をついた。