恋のカルテ
ハッと目を開けると、目の前には佐伯先生がいる。
「……ん、あれ? 先生。どうしてここにいるんですか?」
「どうしてじゃない。ここはオレの部屋だ」
「先生の……部屋?」
首だけ動かしてみてみると、確かに先生のマンションの寝室で、私はベッドに寝かされている。
「本当だ」
「……飲み過ぎだ、高原。泥酔するまで飲むなんてどうかしてる」
「すみません。でも私、ちゃんとここまで帰ってきたんですね」
記憶にはないが、ここにいるということは、そういうことだ。
ひとりで納得していると、先生は首を振る。
「違う。何も覚えてないんだな。お前、オレのスマホに着信残したろ?」
「……ごめんなさい。記憶にないです」
「それもか……まあ、いい。それでかけなおした電話に、森とか言う研修医が出たんだ」
「……え? 森くんが出た」
「そう。ひとりで帰れないと思うから迎えに来てほしいって。その時点ではお前の彼氏だと思ってたみたいだけど、オレの顔を見たら驚いてやがった」
そりゃ、驚くだろう。私を迎えに来たのが佐伯先生だったんだから。冷汗が滲む。
「でもまあ、安心しろ。その時には他の奴らは帰っていなかったみたいだし、口外はしませんってやけに嬉しそうに言ってたから」
「嬉しそうに……」
その時の森くんの顔が思い浮かんで、大きなため息が出た。