恋のカルテ
「あー、おいしい」
「うん、うまい……ってさ。もう本当にごまかすの旨いよね。別に俺は興味本位で高原さんと佐伯先生のことを聞きたいわけじゃないんだよ」
「じゃあ、なに?」
「こう見えても心配してるんだ。同期として、友達として何か力になれることがあればいいなって思ったから」
くりくりとしたかわいい森くんの目は、意外と真剣だ。
「もし、高原さんが佐伯先生に脅されてあんなことになってるんだとしたら、親父に頼んであの人を別の病院に飛ばすことだってできるんだ」
「飛ばす?」
「出来るんだよ。もちろん、表向きはちがっても実際そうやって離島に飛ばされることだってある。怖い世界だと思わない?」
「うん。怖い……でも、佐伯先生は森くんが思ってるような人じゃないよ。もちろん、強引な所があるけど、私、助けてもらったの、先生に」
「助けてもらった?」
「そう。話せば長くなるんだけどね」
話し始めたら止まらなくなってしまった。本当は誰かに聞いてほしかったんだから仕方ない。それが森くんって言うのはあまり頂けない、でも、森くんは私の話を真面目に聞いてくれた。