恋のカルテ
「……もう、どうしたらいいの。初日からこれじゃ先が思いやられるよ」
「初日、だからだろう」
いきなり降って来た声。食堂には誰もいないと思っていたのに。私は声の下方向を見上げる。
「佐伯先生」
「お疲れ」
先生はそういいながら私の向かい側の椅子を引いて座った。手には私が今朝渡したお弁当がある。
「何があったのかは知らないが、誰だって始めから上手くいくやつはいないんだよ」
「そうかも知れません。でも、同期の大津さんはなんでも卒なくこなす人だから私が特別できない人間なのかもしれません」
「比べて落ち込んでるってわけか。でもそれだけじゃなさそうだな」
「……はい」
私は担当患者さんとのことを話した。
担当となることを拒否されたこと。それでも五十嵐先生は私を担当から外さなかったこと。話し終わると先生は、「なんだそんなことか」と言うとお弁当の蓋を開けた。