恋のカルテ
「……もう」
そう呟いてドアにもたれかかる。
あれ以上誘われなかったことにホッとしながらも、断ったことに対して、どこか申し訳ない気持ちになった。
圭人はとても淡白だったけど、佐伯先生はそうじゃない。
私には男の人のそういうの、よくわからないけど、そろそろ限界なんじゃないだろうか。
だから私に遠慮しないで遊んでくれてもいいと伝えたつもりだったのに、「もしかして、妬いてる?」だなんて、どうしてはぐらかしたりしたんだろう。
このまま私といても先生には何の利益もない。そもそも仮の恋人になるなんて言ったのは、売り言葉に買い言葉のようなものだったはず。
五十嵐先生は私たちが似ているから一緒にいるんだろう、だなんて言っていたけれど、そんなはずはない。
じゃあ、先生はいつまでこの関係を続けるつもりなのか。
「まさか本当に、私に恋人が出来るまで、とか?」
そう自分で言ってから、頭をふって掻き消した。
あり得ないことだからこそ、そろそろここを出る準備をしなければならない。でも今夜は山田さんのセカンドオピニオンが受けられる病院探しが先だ。