恋のカルテ

「高原先生は私が戻るまでそこのソファーで休んでいてください」

奥にある休憩室に私を放り込んで急ぎ足でどこかへ行ってしまう。

それからすぐに戻ってきたと思ったら、八木さんの後ろには五十嵐先生の姿が見えた。

「大丈夫か、高原くん。体調が悪いんだって?」

「いえ、大丈夫です」

「……そうは見えないが。では、指導医命令だ。今日は帰りなさい」

五十嵐先生は私を連れて誰もいない医局に戻ると、私をソファーに寝かせる。

それから内線電話でどこかに電話を掛けた。

「高原くん、当直明けのくせにまだ院内で仕事をしているやつがいたからここに呼んだ。診察をしてもらって、終わったら帰りなさい」

当直明けでまだ仕事をしているやつ? それってもしかして。

「あの、五十嵐先生?」

「じゃあ、お大事に。明日もつらければ休んでもらって構わないよ」

誰がここに来るのか、聞くことが出来なかった。

五十嵐先生が医局を出て行ったあと、廊下からせわしない足音が聞こえてくる。

ドアがバタンと勢いよく開き、中に飛び込んできたのは案の定、佐伯先生だった。



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