恋のカルテ
目を覚ましたのは夜中の三時を過ぎた頃。喉の渇きを覚えたからだった。
枕元に手を伸ばし、体温計を脇に挟む。体温は平熱まで下がっている。
点滴も終わってしまったようで、綺麗に片づけられていた。
ゆっくりと気怠い体を起こすと、パジャマに着替えさせられていることに気付く。
「……これ、先生が。じゃあ、まさか下着も?」
慌てて確かめてみると、下着はもとのままだった。
そう言えば、『たくさん汗をかいたから着替えたほうがいい』と声をかけられた気がする。『ひとりでできないなら手伝うけど?』とも。
その問に私は答えた。『お願いします』って。
そうだ。先生は服を脱がすと、温かいタオルで私の体をふいて、このパジャマを着せてくれた。
断片的ではあるけど、思い出せる。
先生の冷たい指が気持ちよくて、恥ずかしいとかやめて欲しいとか全然思わなかった。だからって先生に身体を拭かせて着替えまでさせちゃうなんて、何やってるんだろう、私。
自己嫌悪に陥りながら、先生の姿を探す。寝室にいないということは、リビングだろう。ベッドから降りてリビングに向かう。すると先生はソファーの上で眠っていた。
「こんな所で……」
私に気を使ってくれたんだろう。普段なら一緒に寝ようとしつこい位なのに。
私は寝室から毛布を持って来ると、先生の体にかけた。
疲れ切った顔。当直明けで疲れているのに私の看病。これじゃ、先生の方がダウンしちゃう。
本当はベッドで休んでもらいたかったけれど、今起こすわけにはいかない。私はキッチンで水を飲んでから、ベッドにもぐり込んで夜明けまで眠った。