恋のカルテ

やがて全員に白衣が行きわたると、係りの人はドアの前に立つ。

「それではこれからロッカールームまでご案内します。そこで白衣に着替えていただいたら職員証用の写真撮影と院内見学へ向かいますのでここまでも戻ってくるように。ではみなさん、係りの者に続いてください」

自然とできた列に紛れて歩き出した時、またあの男が話しかけてくる。

「ねえ、待ってよ。ねえ」

これ以上、話すことなんてない。

だからこんな時は無視するに限る。そう思ったのに。

「なんで無視するの、高原さん」

「……どうして、名前」

突然名前を呼ばれて、思わず聞き返してしまった。

「よかった。さっき睨まれたからもう口きいてもらえないかと思った。名前はね、もらった名簿に書いてある。国立の医学部出身なんてすごく優秀なんだね」

「そんなことまで書いてあるんですか?」

「うん。顔写真入りでね。ああそうか。高原さんは遅刻しちゃったからないんだね。なら、あとでもらえばいいよ。」

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