恋のカルテ
抱き付いてきた先生を交わしたつもりが、結局掴まって腕の中だ。
「埋めるの意味が違います! 離してください」
「……いいけど。ああでも、やっぱり心配だな。そいつに会わせろ!」
何を言い出すのかと思えば。これじゃあまるで私の保護者。
「むりです。なんていって紹介するんですか。……あ、でも先生会ってます。今朝話してたMR、その人が私の彼です」
「あいつが……高原の男」
「そうです。仕事もまじめに仕事してるし、結構カッコいいでしょ? だから安心してください。あ、それともし、院内で彼と会っても私とのことは何も言わないでくださいね」
「わかった」
先生はそう言って私を解放してくれた。
「それで? いつでてくの?」
「明日には。いろいろお世話になりました」
荷造りは直ぐにすんだ。持ってきた荷物は少なかったし、参考書や仕事で使うものは病院のロッカーに置いてある。
明日の朝、歯ブラシだけ処分すれば私がここにいた痕跡はすべてなくなる。
私も先生も元の生活に戻るんだ。