恋のカルテ
-2
「ただいま、圭人」
「加恋、おかえり。荷物、持つよ」
「うん。ありがとう」
久しぶりのマンション。そのリビングはお世辞にもきれいとは言えない状態で、私が出て行ってからの圭人の暮らしぶりが手に取るようにわかった。
干しっぱなしの洗濯物。積み重なった新聞と雑誌。コンビニのお弁当とカップラーメンの容器で一杯になったゴミ箱。男がひとりで暮らすということは、こういう事なのかもしれない。
この部屋は、後で私が片づけることになるだろう。
私は途中のスーパーで買ってきた食品を冷蔵庫にしまいながら圭人に声をかける。
「圭人ご飯、まだだよね?」
「まだだけど。加恋、作ってくれるの?」
「もちろんだよ」
「いろいろあったけど、今まで通りに暮らせたらと思ってる」
「うん、私も」
私は圭人のために、ささやかだけど愛情を込めた夕ご飯を作った。
それを二人で食べる。食べ終わったらお風呂に入って隣り合って眠った。
静かな寝息を立てる圭人の横顔をみつめながら思う。
きっとこれが、私の幸せの形なんだろう。
だから、もう二度と壊したらいけない。