恋のカルテ

「どうした、高原」

「……私、先生のことが好きです。だから先生が塗り替えてください。全部」

「言われなくてもそのつもりだよ」

曲げて閉じていた両膝が押し広げられると、不意に不安がよぎる。

「あの私、するの久しぶりで……ちゃんとできるかどうか」

「分かった。安心しろ、このまま入れたりしないから」

“待てない”なんて言っていたくせに。先生はたっぷり時間をかけて、私の不安を取り除いてくれる。

「高原。もういい?」

そう聞かれて頷くと、避妊具を付けた先生が、ゆっくりと私の中に入ってくる。

始め感じた違和感は徐々に薄れて行き、激しく打ち寄せる様な快感の波に飲み込まれていく。

私は必死で先生の背中にしがみついた。

「大丈夫か? 高原」

「はい。……あの、先生」

「なんだ?」

「名前で、呼んでくれませんか?」

図々しい願いかもしれない。でも、耳に残る圭人の声も、忘れさせて欲しかった。

「いいよ。……――加恋」

涙が一筋こぼれた。

圭人のことで泣くのは、これで最後にしよう。

長い夜だった。

何度も重なり合い溶け合うように馴染んだ体。

相性がいいのだと先生は言った。確かにそうかもしれない。

私は初めて抱かれながら意識を飛ばした。


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