恋のカルテ
「研修医が患者と救急車に乗ってご出勤って。それは事実ですけど、私色々やらかしちゃってなんかいません」
「なんだ? それはオレじゃない。まあ、そんなこというとしたら、あの車両にいたうちの勤務医の中の誰かだろうな」
「あの車両、他にも先生がいたんですか?」
だって、あの時乗客の呼びかけには誰も答えなかったじゃないか。
「二人。いや、三人はいたかな。皮膚科の大野と眼科の柳下。後は病理の新崎がいたはず。みんな目の前で倒れた患者を見殺しにする気満々のヘボ医者たちだ」
「……どうしてですか?」
「どうして?そんなの決まってるじゃないか。責任取りたくないからだよ。医者だって名乗り出て、助けられなかったらどうする?」
「……私はそんなことは考えませんでした。ただ医者として、目の前で苦しんでいる人を放っておくなんて、できなかったから」
生意気だったかもしれない。
でもこれが本心だ。