恋のカルテ
私は先生が好きで、今は幸せだ。それで十分じゃないかと言い聞かせても、納得できない自分がいる。
思い描くのは先生との結婚。
彼となら幸せな家庭が気付けると思うのに、それを望めないのは悲しい。
「私にも、いろいろ悩みもあるんだよ」
「へえ、そう。ああ、そうだこれ、親父から」
森くんは白衣のポケットから、くしゃくしゃになった白い封筒を取り出した。
「森教授から?」
「うんそう」
「なんだろう」
「さあ。本当はこういうことはしちゃいけないらしいから内密にって。……なんだろうね」
届けられたのは、山田さんの訃報だった。最後の一文には、山田さんが私に感謝の言葉を述べていたとあった。
「何が書いてあったの?」
「私が担当していた患者さん、亡くなったって」
「……そっか。前に、親父の所に送った患者さんだね」
「うん」
わずかに延びた時間は、山田さんにとって納得のいくものだっただろうか。
まだまだ医者として力不足の私には、彼女の冥福を祈ることしかできないのだけれど。