恋のカルテ
「どうしたの? 高原さん」
「いえ、なんでもありません。朝木先生」
「そう、ならいいけど。というわけで、佐伯、後はよろしくね」
「承知しました」
その時ちょうど救急車が到着したらしく、急に慌ただしい雰囲気に包まれる。
「行かなくていいんですか?」
「いいのいいの。人は足りてる」
いわれてみればそうだ。ここは若い医師がたくさんいる。
「本当だ」
「だろ。オレの役目は加恋のお守だから。……診察室へ行くぞ。ついてこい」
「は、はい」
いよいよだ。勢いよく回れ右をしたら、何もないところで躓いてしまった。
「大丈夫かよ。もしかして、緊張してる?」
「少しは。でも、頑張ります」
先生について、救急外来の診察室へ向かう。
ここでは救急搬送されて以外の患者の診療を行っている。
基本的には症状の軽い患者は受け入れず、当番病院への受診を促すのだが、それでも来院した場合は診療せざるを得ない。