恋のカルテ

 救急外来の当直が始まってひと月。外科での研修を終えた私はそのまま救急科に移った。

思った以上にハードな毎日だったけど、佐伯先生と一緒に仕事が出来るのは嬉しい。

シフトが一緒だと、休みも同じだ。

今日は初めてドライブに連れて行ってもらい、美味しいお寿司を食べさせてもらった。それから海沿いを走り、小さな灯台のある港に車を停めた。

「加恋がいなかったら休日なんて寝て過ごして終わりだな」

「私も多分そうです。朝からゴロゴロして一日が終わってると思います。だから誘ってもらえてよかった」

「そっか、ならよかった」

「そうですよ」

防波堤に腰を下ろし、しばらくの間二人で海をみつめた。太陽は赤とオレンジのコントラストを作りながら海に溶けていく。

「きれいでだな」

「そうですね、とてもきれい」

言いながら佐伯先生を見ると、お互いの視線がぶつかった。先生は無言で私の頬に手を伸ばし、ゆっくりと顔を近づけてくる。

私はそっと目を閉じて、先生のキスを待った。

柔らかな温もりがそっと触れた時、先生の上着のポケットでスマホが突然震えだす。

< 217 / 250 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop