恋のカルテ
連れてこられたのは、高級ホテルのカフェラウンジ。
「シャンパンでもお飲みになる?」
席に着くと、ドリンクメニューを開いてお継母様は聞く。
「いえ、何もいりません」
「そう。……じゃあ、アールグレイを二つ」
ウエイトレスを呼んで紅茶を二つ注文すると、それは直ぐ運ばれてきた。
ティーポットから注がれた紅茶は、とてもいい香りがする。
相手がお継母様じゃなかったら、ゆっくりとお茶を楽しみたいところだけれど、とにかく早く帰りたい。
「あの、話ってなんですか?」
お継母様は紅茶を口にしてから、ゆっくりと口を開く。
「そう急かさないで下さる」
「すみません」
「あの子にはね、麻生病院を継いでもらいたいの。新しく医療センターを建てる計画があるのよ。院長の完全復帰が危ぶまれる中、その計画を推し進めるためには有能な後継者が必要でしょ? あと、莫大な資金も」
「あの、つまりなにがおっしゃりたいのでしょうか?」
「そうね。分からないわよね。率直に言うわ。……朝陽さんと、別れてくださらない」
「……え」
そう言われることを、全く予測していないわけではなかった。しかし、実際にその言葉を投げかけられると絶句してしまう。