恋のカルテ
マンションに戻ると、佐伯先生が帰ってきていた。
「お帰り、加恋。遅かったね。どこか寄り道?」
お継母様とあったなんて、先生には話せない。ただでさえ仲が悪いのに、この事実を伝えたら、どうなってしまうかくらい想像がつく。
できれば先生には何も知らせずに、自分でどうにかしたかった。
「……はい。同期とお茶してました」
「たまにはそういうのもいいよな。家と職場の往復じゃ息が詰まるし」
「そう、ですよね。……私、着替えてきます」
お継母様から渡された一万円札をチェストの引き出しにしまうと、部屋着に着替えてリビングにでる。
「夕ご飯、まだですよね。何か作ります」
「いいよ、今夜はオレが作る。……って言っても、大したものはできないけど」
「じゃあ、手伝います」
先生と一緒にキッチンに立つ。
こうしているだけでも幸せで、私はこれ以上何も望まない。だから、このままずっと先生の傍にいられたら、それでいいんだ。