恋のカルテ

 患者の死因は、脳出血だった。

後日私は院長室に呼び出され、今後の処分について言い渡されることになった。

「今回のことは、ご家族も当院の責任は問わないとおっしゃってましたので、厳重注意ということにしておきましょう。これにめげず、しっかりと医学の道を歩みなさい」

病院長は私の提出した事故発生届に印鑑を押す。

「申し訳ありませんでした」

「謝罪は私ではなく、患者様とご遺族に」

「はい」

「それと、佐伯先生にも。……先生はあなたのミスを全て自分の責任だといってご遺族に頭を下げたそうだよ」

「……そうだったんですか」

知らなかった。あれから私は佐伯先生のことを避けていたから。

先生もマンションに帰らずに、仮眠室に泊まっていた。もう半月になる。

院長室を出ると、院内にいるはずの佐伯先生を探した。

今日、佐伯先生は休みだ。休みとはといっても、午前中はしっかり救急外来で仕事をし、昼には製薬会社主催のランチョンセミナーにも出ていた。

私は仮眠室へ向かった。しかし、午後の仮眠室は清掃が入ったりしていて、全て空室だ。

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