恋のカルテ
「ここじゃなかったか」
じゃあ、どこにいるんだろう。そろそろ仕事に戻らないといけない時間なのに。
救外に戻る途中で、私は図書室に立ち寄った。
仕切りのある机の上には、佐伯先生のパソコンが開いたままで置いてあり、傍に置かれた紙コップのコーヒーからは湯気が立ち上っている。
「なんだ。ここにいたんだ」
私は先生の姿を探した。すると、奥から話し声が聞こえる。
「……ならキスしてくださいよ。佐伯先生」
私はぴたりと足を止めた。かわいらしい声が先生にキスをねだる。
「いいよ」
並べられた本の隙間から、二人が重なり合うのが見えたけど、それは直ぐに涙で滲んで見えなくなってしまった。
……浮気?それとも本気?
どちらでも同じだ。私は、先生に愛想を尽かされてしまった。自業自得。だから先生を責めることすらできない。