恋のカルテ
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病院から五分歩くと、地下鉄の駅が見えてくる。
帰り道には何も起こりませんようにと心の中で祈りながら、混雑し始めたホームで電車が到着するのを待つ。
やがて到着した電車に乗り込むと、運良く空いた座席に腰を下ろした。
今日は朝から色々なことがあって疲れてしまった。
初日からこれでは先が思いやられる。
定時に帰れるのも今の内と森くんは言っていたけれど、これからローテートが始まったら家に帰れるかも怪しい。
だから私はこの十日で、圭人との時間を思い切り楽しみたいと思っているのに、今彼はとても忙しい。
週末は勉強会という名の接待で、土日は担当している病院の医者と泊りがけでゴルフ。
これでも昔よりはだいぶ少なくなったそう。
けれど、製薬会社と医者の関係性なんて、そう簡単には変われないのだと圭人はよくぼやいていた。