恋のカルテ
歩き出した途端に、白衣の裾をツンと引かれる。
振り返ると、ベッドの上で上半身だけ起こした佐伯先生が、私を見据えていた。
「……したいんだけど」
「なにをですか?」
問われた意味が分からなかった。首を捻る。
すると佐伯先生は、それこそ意味が分からない、とでもいう様な顔をした。
「何って、セックスだけど」
「セ……な、なんてこと言うんですか?」
思わず声を張り上げてしまった。
隣の部屋も使用中だったはず。
私は慌てて声のボリュームを落とした。