恋のカルテ
「寝惚けたこと言わないでください。ここ、職場ですよ?」
「でもここ、仮眠室だから。つまり場外なわけ。分かる?」
だから何をしても構わない、とでもいうのだろうか。
平然と言ってのける佐伯先生を軽く睨んで、語気を強める。
「分かりません。分かりたくもない!」
「今はそうかもしれない。でもそのうち分かるようになるって。息抜きしないとすぐ潰れるよ。あと、死ぬほど疲れてるとさ、生殖本能が刺激されるんだよね。ほら、死ぬ前に子孫を残せってやつ。種の保存。習ったろ」
ただの性欲を都合よく言い替えているだけのような気がするけれど、論理的に述べられると頷いてしまいそう。
「別に子供は欲しくないけど、しないと今日の仕事に差し支える。だから相手になってよ」
「絶対に嫌です。そうやって誰にでも声をかけてるんでしょう?」
「かけてねーよ、くる者拒まずなだけ。自分で言うのもなんだけど、オレ上手いよ」