恋のカルテ
自信に満ちた声。
わりと低めの太い音は、私の鼓膜を擽ってぞくぞくと身を震わせる。
それに気づいた先生はわざと甘い声色で私の名前を呼んだ。
「……高原」
まるで吸い寄せられるように見つめてしまった佐伯先生の目は、獲物を狙う獣みたいに鋭い。
だから私は追い詰められた小動物のように身動きすらできなくなってしまった。
そんな私の手を掴んで強引に引き寄せると、親指の付け根に唇を押し当てて軽く牙をたてる。
「やっ、……あ」
どうしよう、拒めない。
その時だった。
私のポケットで、佐伯先生のPHSが大きく震えながら鳴り始めた。