恋のカルテ
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四月。
マンションを出ると、まるで今日という日を祝うかのように散り始めた桜の花びらが美しく舞い踊っていた。
「……きれい」
私、高原加恋は六年間通った医大を卒業し、今年の三月に無事、医師国家試験にも合格。今日は二年間研修医としてお世話になる病院の入職の日だ。
都内でも有数の総合病院で、高度救急救命センターが併設されていることもあり、年間の来院患者数は三本の指に入ると言う。
加えて手術件数も群を抜き、患者は生きるが医者は死ぬ。
そう揶揄されるほどの忙しさらしい。
それでも私がこの病院を選んだのは、優秀な外科医がたくさん在籍していると聞いたから。
私は将来、消化器外科の医師として、たくさんの人の病を治していきたいと思っている。
そのためにはまず二年間、初期研修医として様々な診療科目を学んでいかなければならない。