恋のカルテ
当直室でしたいってストレートに誘われて……でも、それ以上は何もなかった。
「……ない、ないないない」
続きは今度といわれたけれど、あれはただの冗談だと思いたい。
「ふーん、じゃあなんで顔が真っ赤なわけ? すんごく怪しいんですけど」
「怪しくなんてないから」
否定する私をからかう様に、両方の人差指で私の頬をつつく。小学生め。
「ふにふにだね、ふにふに」
いいながら森くんは綺麗な二重の大きな目を細める。
佐伯先生とは違う。好奇心旺盛な子犬の目。
しっぽを振りながら遊んで遊んでといっているみたい。
「もういい加減にして」
森くんの両手首を掴むと、めっ、といって振り払う。
それと同時に休憩時間が終わり、森くんはつまらなそうな顔でくるりと前を向いた。