恋のカルテ
不安がないと言ったら嘘になる。
でも私には、同じ分野で頑張る両親や兄。それから高校時代から付き合っている恋人がいてくれるから。
だからきっと頑張れる。
そう自分に言い聞かせながら地下鉄の駅へと向かい、通勤客で混雑する電車に乗り込んだ。
今日の入職式以降はオリエンテーションが十日間続く。
それまではこの時間帯の電車に揺られなければならないなんて。
さすがにこの混み具合はなんというか、息が詰まりそう。
下車駅までは十五分。
私はドアと乗客の間にできた隙間に身を置くとホッとひと息ついた。
その時だった。
同じ車両の中心部がにわかに騒めき、悲鳴にも似た声がこう叫ぶ。