恋のカルテ

「おい、高原」

いきなり背後から名前を呼ばれてビクッと肩を震わせた。

その声の主が誰かだなんて、振り返らなくても分かる。

何て最悪なタイミング。

そう思いながらしぶしぶ回れ右をする。

「なんですか、佐伯先生」

「今日はもう上がりだろ」

「はい、そうです……けど」

私がそう答えると、佐伯先生はさも満足げにほほ笑む。

……いやな予感がする。

「うん。じゃあお前にこれあげる」

はい、とプリントを差し出され、思わず受け取ってしまった。

仕方なく目を走らせるとそこには院内講演の文字。

< 69 / 250 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop