恋のカルテ
「……講演会ですか?」
「そう毎月恒例の院内講演。今日の講師はアメリカ在住の日本人医師で、臓器移植のスペシャリストだそうだ」
「そうなんですか、スゴイ」
そう教えられて、心惹かれる自分が悲しい。
今日はもう帰るつもりでいるのにだ。
「そうそう。でもオレ、これから他の病院の当直のバイトが入ってて出られないんだよね。だから高原が代わりに聞いておいて」
「どうして私なんですか?」
「どうして? それはお前がオレの前を歩いていたからに決まってるだろ。ラッキーだったな、高原」
いいながら佐伯先生は首から下げていた職員証を外すと私の首にかけた。