恋のカルテ

ホールの前にはテーブルが置いてあった。

私はそこに置いてある資料を二部手に取ると、設置されているカードリーダーに自分と先生の職員証をかざす。

誰かに見られていないか、とてもドキドキとする。

こんなことまでさせられて、しかも帰りが遅くなってしまうだなんて。

本当についてない。

まだ人もまばらな会場に入り、後ろの方の席に座る。

すると係りの事務員に前の方に座るようにと促されてしまう。

十分遅れで始まった講演はとても素晴らしい内容で、面白いと素直に思えたから、長いと思っていた二時間があっという間に過ぎた。

佐伯先生に感謝……はもちろんするつもりはないけれど、自分のためにはなったからまあ、いいか。

私はセントラルホールを出てロッカーで着替えると急いで病院を飛び出した。

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