恋のカルテ
-1
「……どうしたらいいんだろ?」
圭人に言われるがまま家を出てきたものの、行く当てなんてなかった。
夜空に浮かんだ半分の月を見上げて、私はため息を吐く。
突然連絡をしても受け入れてくれるような親しい友達は、大学卒業後みんな地元に戻ってしまっている。
とにかくどこかで落ち着こうにも、私はファストフード店やファミレスなんかにひとりで入るのが苦手だ。
子供みたいだとよく笑われた。
別に気にしてはいなかったけど、こんな時に困るなんて、今更思い知った。
ホテルにでも泊まろうかと考えては見たけれど、金銭的な事情も考慮して病院へと足を向けた。
これからしばらくは仮眠室に泊まって、職員寮にでも入れてもらおう。
今の私には、それくらいのことしか思いつかない。