砂の国のオアシス
5 (カイル視点)
「俺は自分が愛する女だけをそばに置く」
「そんな我欲を通すことより、国王(リ)としての立場で考えて物を申して下さい!とにかく、あの娘と御成婚なさるべきではありません!」
「なぜだ」
「なぜって、それは・・・」
「俺の母は、イシュタールの町出身のいわゆる“庶民”だった。その時点ですでにおまえが考えている“高貴な血”というのが、母の子である俺には半分無いも同然」と俺が言うと、年寄り官吏は「ぐ・・」と言葉を詰まらせた。
今まで面と向かってこ奴に言ったことがないから、さぞ驚いたという顔をしているが、常日頃から俺をそういう目で見ていることくらい、この俺が知らんとでも思ったか、愚か者。
「では、御世継ぎはどうなさるおつもりですか!」
「あれがたくさん子を生めばよかろう」
「な・・・」
「仮に俺が世継ぎを残すことが出来なければ、弟か妹たちが残せば良い。エミリアにはもうすぐ子が生まれる。テオも時機に子を授かるだろう。案ずることは何もないではないか」
「しかしリ・コスイレ!あの娘はイシュタール人ではないどころか、異世界から来たよそ者で・・・」
「確かに」と俺は言いながら、その発言をした奴を斜め上から睨んだ。
途端、そ奴は首を竦める。
「しかしあれはテロリストでもなければ犯罪者でもない。どこから来た者か、どのような身分の者か、俺はそれらだけを基準に生涯を共にする相手を選ぶつもりはない。他に言いたい事がある者は」と俺は言うと、サッと立ち上がった。
すると、俺に倣って皆が立ち上がる。
「俺は次の予定があるのでこれで失礼する。おまえたちがどれだけ意見を交わそうと、ナギサと結婚するという俺の意志は変わらん。無駄なことに時間を費やすな」と俺は言いながら、すでにドアまで歩き出していた。
「かしこまりました、リ・コスイレ」という声が背後からちらほらと聞こえたのを最後に、俺は議会室を出た。
もうすぐナギサが花壇に来る時間だというのに、くだらん議論をしたおかげで、いつもより会議が長引いてしまった。くそっ。
自然と執務室まで足早に歩く俺の後ろから、秘書のイングリットが小走りに追いかけた。
俺が椅子に座って数秒後。
ナギサが花壇に現れた。
今日も花壇に水をやりながら、土に向かって話しかけたり、独り言を呟いている。
俺は机に左肘をつき、頬杖をついて小柄なあれがしゃべる姿を眺める。
今日はいつもよりナギサの喜びようが大げさに見える。
何かあったか。
夕方会う時に話してくれるだろう。楽しみだ。
そのとき俺のフォンが鳴った。
「もう来たか」と思いながら、俺はフォンを手に取った。
案の定、連絡を取ろうと思っていた奴からかかって来た事に、満足気な笑みを浮かべる。
「俺だ・・・あ?“俺”で分かるから良いではないか・・・ああ、大丈夫だ。話せ・・・・・・・・・分かった。来週からで良い。長期滞在になるつもりで来い・・・何?どっちが偉そうな口調で話している!おまえはもう俺の上官ではない・・・ああ、あれにも言っておく。アズラエルは喜ぶだろ・・分かった!じゃあな!」
全く。フォンでもあ奴と話すのは、無駄なエネルギーを浪費し過ぎる。
だが・・・面白い事を聞いた。
という思いを隠しきれない俺の顔は、自然とニヤけていた。
「・・・イングリット」と俺は呼びながら、目線はナギサから動かさない。
「はい、リ・コスイレ」
「おまえがあの時、花壇で倒れていたナギサを助けたそうだな」
「あ・・・あの、御報告をしなくて申し訳ございません」
「構わん。あれが俺に言うなと言ったのだろう?」
「・・・」
どちらかの命に従ったことで、どちらかに背くことになる。
だから容易に返事はできん、か。
「あれはヒルダにも口止めをしたからな」
「然様でございますか・・・」
以来、俺が命ずる前に、ヒルダは花壇周辺の「警備」と、ナギサの「護衛」を自主的に復活させた。
あれは知らんことだが・・まあ、知らなくても良い事だ。
しかしナギサが大学へ行くことになれば・・・いや、あれが「試験はできた」と言った以上、合格しているに決まっている。
故にあれは大学へ行く事になる。
そうなるとナギサの行動範囲は広がる事になり、必然的にヒルダ一人で護衛は無理となる。
大学の講義中ともなると尚更だが・・・あ奴ならば、ナギサの護衛を任せることが出来る。
しかもナギサが護衛をされている身と周囲に感づかれることもない。
俺は花壇にいるナギサを眺めたまま、「何故あれらは花壇の場所を知ったのか・・・」とつぶやいた。
「・・・は?」
「知っていたか。俺の執務室があるこの周辺は、人の出入りを少なくしている事を」
「あ・・・いいえ」
「人通りが多いと気が散るからな。それに相手も俺を見かける度、いちいち俺に頭を下げねばならん」
「成程。言われてみればそうでございますね。ワタクシ、王宮に勤めて5年程となる新参者故、初めて知りました。教えていただいて、どうもありがとうございます」
「・・・おまえは確か、ヒルダと同じ年齢(とし)と言っていたな」
「はい。ヒルデガルドとは、小学校の時、1年だけでしたがクラスメイトだったこともございます」
「ヒルダとはずっと連絡を取っていたのか?」
「いいえ。ヒルダとはクラスメイトだったという程度の知り合いで。ワタクシはイシュタールを離れていた時期もございましたし」
「そうだったな」
それはヒルダからも、イングリットの息子であるウィンからも聞いた事がある。
「あれらを花壇へ出入り禁止にして以来、ナギサはまたあそこで楽しく過ごすようになった」
「それは非常に喜ばしいことでございます」
「イングリット」
「はい、リ・コスイレ」
「俺が国外訪問で王宮を留守にした時に、ナギサは花壇で襲われた。このタイミングはなかなか出来た“偶然”だとは思わんか」
「偶然、ですか?」と聞くイングリットを俺は無視し、花壇にいるナギサを見続ける。
俺のスケジュールを把握している者。
加えてナギサの花壇がある場所を知ってるだけではなく、あれが何時来るかまで知ってる者は、ごく限られている。
後宮の女共をそそのかし、あれらの嫉妬心を上手く利用すれば、自分で直接手を下さずとも、“偶然”を装うことは容易に出来る。
そして先のフォンでの「報告」。
あの男に「洗脳」された奴ならば、いかにも思いつきそうな事だ。
「俺の楽しみはあれの楽しみでもある。故にあれの楽しみを邪魔する奴は、俺の楽しみの邪魔をしている事にもなる」
「そうでございますね、はい」
「あれの楽しみの邪魔をするどころか、危害を加えるなど以ての外」
「御尤もでございます」
「俺の愛する者を傷つけようとする奴に、俺は慈悲などかけるつもりはない。微塵もな」
「はぁ・・・」
「次回は証拠が無くとも、今回のように確証した段階で問答無用に殺す」
「はい?あの、リ・コス・・・」
「誰であろうと、だ。覚えておけ」
と俺が王宮の庭で言ったのは、後宮の女共だけに言ったのではないと、よく覚えておけ、という俺の意図が分かったのか。
「わ・・・かり、ました。リ・コスイレ」と言ったイングリットの声は震えていた。
それが俺に対する恐怖からなのか、それとも憤りからなのか。
恐らく後者だろう。
面白い。俺はもちろん、ナギサもそう簡単には殺られはせん。
その日の夕方、ナギサの部屋のドアを開けた途端、これは「カイル!」と叫びながら、文字通り俺に飛びついてきた。
「どうした」と言いながら抱きついている小柄なナギサを見下ろすと、これは満面笑顔で俺を見上げていた。
くそっ。早くも煽られた。
「聞いてよ!あのね、芽が出たの!」
「・・・そうか」
それであの時、はしゃぐように喜んでいたのか。
ナギサは「こーんなにちっちゃいのよー」と言いながら、親指と人さし指を数ミリ開けて俺に示す。
「最初は雑草かと思ったんだけど、それにしてはちょっと違うなーと思って。あぁ嬉しいなぁ。あんまり嬉しかったから、あなたに言いに行こうと思ったんだけど、どこにいるのか分かんないし、こんなことでフォン使うのもね」
はにかみながら嬉しそうに話すナギサを、俺はじっと見ながら聞いていた。
夢を見ているようにうっとりした表情や、黒い目の輝き、少し赤く染まった頬。
ナギサの全てが美しい。
「どんな花が咲くんだろう。それとも実が成るのかなぁ、ってちょっとんんんーっ!」
話している途中悪い、とは多少思ったが我慢出来ず、キスをした。
この部屋に入ってまだキスをしていなかった・・のは言い訳かもしれんが、これは事実だ!
それに会った途端、煽り続けるナギサにも責任はある。
「構わん」
「・・・は。なにが・・」
「フォンでも直接会いに来ても俺は構わんと言っている」
「あ、そう・・」
「おまえが嬉しいと思ったことは、“こんなこと”ではない。俺も嬉しい」
「・・・ゴライブ(ありがとう)」
「夕食を食べよう」
「うん!」
俺はナギサの手を取ると、部屋に用意されている食事のテーブルまでエスコートをした。
ヒルダもいたことに、今気がつく。
「これね、まだヒルダさんにも言ってなかったの」とナギサが歩きながら俺に囁いた。
「そうか」
「あなたに一番最初に言いたくて」
「・・・そうか」
この幸せな時を、少しでも長く続けたい。
そしてこの幸せな瞬間を、少しでも多くナギサと分かち合いたい。
「そんな我欲を通すことより、国王(リ)としての立場で考えて物を申して下さい!とにかく、あの娘と御成婚なさるべきではありません!」
「なぜだ」
「なぜって、それは・・・」
「俺の母は、イシュタールの町出身のいわゆる“庶民”だった。その時点ですでにおまえが考えている“高貴な血”というのが、母の子である俺には半分無いも同然」と俺が言うと、年寄り官吏は「ぐ・・」と言葉を詰まらせた。
今まで面と向かってこ奴に言ったことがないから、さぞ驚いたという顔をしているが、常日頃から俺をそういう目で見ていることくらい、この俺が知らんとでも思ったか、愚か者。
「では、御世継ぎはどうなさるおつもりですか!」
「あれがたくさん子を生めばよかろう」
「な・・・」
「仮に俺が世継ぎを残すことが出来なければ、弟か妹たちが残せば良い。エミリアにはもうすぐ子が生まれる。テオも時機に子を授かるだろう。案ずることは何もないではないか」
「しかしリ・コスイレ!あの娘はイシュタール人ではないどころか、異世界から来たよそ者で・・・」
「確かに」と俺は言いながら、その発言をした奴を斜め上から睨んだ。
途端、そ奴は首を竦める。
「しかしあれはテロリストでもなければ犯罪者でもない。どこから来た者か、どのような身分の者か、俺はそれらだけを基準に生涯を共にする相手を選ぶつもりはない。他に言いたい事がある者は」と俺は言うと、サッと立ち上がった。
すると、俺に倣って皆が立ち上がる。
「俺は次の予定があるのでこれで失礼する。おまえたちがどれだけ意見を交わそうと、ナギサと結婚するという俺の意志は変わらん。無駄なことに時間を費やすな」と俺は言いながら、すでにドアまで歩き出していた。
「かしこまりました、リ・コスイレ」という声が背後からちらほらと聞こえたのを最後に、俺は議会室を出た。
もうすぐナギサが花壇に来る時間だというのに、くだらん議論をしたおかげで、いつもより会議が長引いてしまった。くそっ。
自然と執務室まで足早に歩く俺の後ろから、秘書のイングリットが小走りに追いかけた。
俺が椅子に座って数秒後。
ナギサが花壇に現れた。
今日も花壇に水をやりながら、土に向かって話しかけたり、独り言を呟いている。
俺は机に左肘をつき、頬杖をついて小柄なあれがしゃべる姿を眺める。
今日はいつもよりナギサの喜びようが大げさに見える。
何かあったか。
夕方会う時に話してくれるだろう。楽しみだ。
そのとき俺のフォンが鳴った。
「もう来たか」と思いながら、俺はフォンを手に取った。
案の定、連絡を取ろうと思っていた奴からかかって来た事に、満足気な笑みを浮かべる。
「俺だ・・・あ?“俺”で分かるから良いではないか・・・ああ、大丈夫だ。話せ・・・・・・・・・分かった。来週からで良い。長期滞在になるつもりで来い・・・何?どっちが偉そうな口調で話している!おまえはもう俺の上官ではない・・・ああ、あれにも言っておく。アズラエルは喜ぶだろ・・分かった!じゃあな!」
全く。フォンでもあ奴と話すのは、無駄なエネルギーを浪費し過ぎる。
だが・・・面白い事を聞いた。
という思いを隠しきれない俺の顔は、自然とニヤけていた。
「・・・イングリット」と俺は呼びながら、目線はナギサから動かさない。
「はい、リ・コスイレ」
「おまえがあの時、花壇で倒れていたナギサを助けたそうだな」
「あ・・・あの、御報告をしなくて申し訳ございません」
「構わん。あれが俺に言うなと言ったのだろう?」
「・・・」
どちらかの命に従ったことで、どちらかに背くことになる。
だから容易に返事はできん、か。
「あれはヒルダにも口止めをしたからな」
「然様でございますか・・・」
以来、俺が命ずる前に、ヒルダは花壇周辺の「警備」と、ナギサの「護衛」を自主的に復活させた。
あれは知らんことだが・・まあ、知らなくても良い事だ。
しかしナギサが大学へ行くことになれば・・・いや、あれが「試験はできた」と言った以上、合格しているに決まっている。
故にあれは大学へ行く事になる。
そうなるとナギサの行動範囲は広がる事になり、必然的にヒルダ一人で護衛は無理となる。
大学の講義中ともなると尚更だが・・・あ奴ならば、ナギサの護衛を任せることが出来る。
しかもナギサが護衛をされている身と周囲に感づかれることもない。
俺は花壇にいるナギサを眺めたまま、「何故あれらは花壇の場所を知ったのか・・・」とつぶやいた。
「・・・は?」
「知っていたか。俺の執務室があるこの周辺は、人の出入りを少なくしている事を」
「あ・・・いいえ」
「人通りが多いと気が散るからな。それに相手も俺を見かける度、いちいち俺に頭を下げねばならん」
「成程。言われてみればそうでございますね。ワタクシ、王宮に勤めて5年程となる新参者故、初めて知りました。教えていただいて、どうもありがとうございます」
「・・・おまえは確か、ヒルダと同じ年齢(とし)と言っていたな」
「はい。ヒルデガルドとは、小学校の時、1年だけでしたがクラスメイトだったこともございます」
「ヒルダとはずっと連絡を取っていたのか?」
「いいえ。ヒルダとはクラスメイトだったという程度の知り合いで。ワタクシはイシュタールを離れていた時期もございましたし」
「そうだったな」
それはヒルダからも、イングリットの息子であるウィンからも聞いた事がある。
「あれらを花壇へ出入り禁止にして以来、ナギサはまたあそこで楽しく過ごすようになった」
「それは非常に喜ばしいことでございます」
「イングリット」
「はい、リ・コスイレ」
「俺が国外訪問で王宮を留守にした時に、ナギサは花壇で襲われた。このタイミングはなかなか出来た“偶然”だとは思わんか」
「偶然、ですか?」と聞くイングリットを俺は無視し、花壇にいるナギサを見続ける。
俺のスケジュールを把握している者。
加えてナギサの花壇がある場所を知ってるだけではなく、あれが何時来るかまで知ってる者は、ごく限られている。
後宮の女共をそそのかし、あれらの嫉妬心を上手く利用すれば、自分で直接手を下さずとも、“偶然”を装うことは容易に出来る。
そして先のフォンでの「報告」。
あの男に「洗脳」された奴ならば、いかにも思いつきそうな事だ。
「俺の楽しみはあれの楽しみでもある。故にあれの楽しみを邪魔する奴は、俺の楽しみの邪魔をしている事にもなる」
「そうでございますね、はい」
「あれの楽しみの邪魔をするどころか、危害を加えるなど以ての外」
「御尤もでございます」
「俺の愛する者を傷つけようとする奴に、俺は慈悲などかけるつもりはない。微塵もな」
「はぁ・・・」
「次回は証拠が無くとも、今回のように確証した段階で問答無用に殺す」
「はい?あの、リ・コス・・・」
「誰であろうと、だ。覚えておけ」
と俺が王宮の庭で言ったのは、後宮の女共だけに言ったのではないと、よく覚えておけ、という俺の意図が分かったのか。
「わ・・・かり、ました。リ・コスイレ」と言ったイングリットの声は震えていた。
それが俺に対する恐怖からなのか、それとも憤りからなのか。
恐らく後者だろう。
面白い。俺はもちろん、ナギサもそう簡単には殺られはせん。
その日の夕方、ナギサの部屋のドアを開けた途端、これは「カイル!」と叫びながら、文字通り俺に飛びついてきた。
「どうした」と言いながら抱きついている小柄なナギサを見下ろすと、これは満面笑顔で俺を見上げていた。
くそっ。早くも煽られた。
「聞いてよ!あのね、芽が出たの!」
「・・・そうか」
それであの時、はしゃぐように喜んでいたのか。
ナギサは「こーんなにちっちゃいのよー」と言いながら、親指と人さし指を数ミリ開けて俺に示す。
「最初は雑草かと思ったんだけど、それにしてはちょっと違うなーと思って。あぁ嬉しいなぁ。あんまり嬉しかったから、あなたに言いに行こうと思ったんだけど、どこにいるのか分かんないし、こんなことでフォン使うのもね」
はにかみながら嬉しそうに話すナギサを、俺はじっと見ながら聞いていた。
夢を見ているようにうっとりした表情や、黒い目の輝き、少し赤く染まった頬。
ナギサの全てが美しい。
「どんな花が咲くんだろう。それとも実が成るのかなぁ、ってちょっとんんんーっ!」
話している途中悪い、とは多少思ったが我慢出来ず、キスをした。
この部屋に入ってまだキスをしていなかった・・のは言い訳かもしれんが、これは事実だ!
それに会った途端、煽り続けるナギサにも責任はある。
「構わん」
「・・・は。なにが・・」
「フォンでも直接会いに来ても俺は構わんと言っている」
「あ、そう・・」
「おまえが嬉しいと思ったことは、“こんなこと”ではない。俺も嬉しい」
「・・・ゴライブ(ありがとう)」
「夕食を食べよう」
「うん!」
俺はナギサの手を取ると、部屋に用意されている食事のテーブルまでエスコートをした。
ヒルダもいたことに、今気がつく。
「これね、まだヒルダさんにも言ってなかったの」とナギサが歩きながら俺に囁いた。
「そうか」
「あなたに一番最初に言いたくて」
「・・・そうか」
この幸せな時を、少しでも長く続けたい。
そしてこの幸せな瞬間を、少しでも多くナギサと分かち合いたい。