青に呑み込まれながら、ひたすら君を想う訳。
「亜子、棗が手振ってるよ」
「・・・・・・え?」
俯いた顔を上げて前を見ると、少し湿った髪が風に揺れる、棗がいた。
・・・・・・笑いながら、鞄を肩にかけて。
眩しいくらいの笑顔を、向けて。
一直線に、私達の元へと歩いてくる。
「亜子来てたんだ。
見た?俺が泳いでるの!!」
「もちろん、見てたよ」
棗が、私の名前だけを呼んだこと、棗の目に映っているのが私だけだという事。
ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、嬉しかったのも事実だ。