A voiceprint
2章 濱野月子という女性

3 失踪事件から1年後

 黒川とyumikaが失踪してからちょうど1年後。

 街中の様子はすっかり変わり、時代は移りゆき、今年は良太がプロデュースした新人のnatuとkumiが怒涛の勢いで歌姫の座を二分していた。二人ともyumikaが失踪する前までは事務所の研究生だったため、たった一年でここまで成長著しいのはすばらしいことである。また、yumikaのことをよく知っている数少ないアーティストでもあった。

 二人を区分けするならばnatuはセクシー系のロッカーであり、kumiはアイドル系のポップシンガーである。

 二人とも日本各地の大きいコンサート場でファンの前で歌う。小規模でしか出来ないyumikaのコンサートとは違い、何千人単位の大きな会場で歌うので、みんながライブに参加することが出来た。さすがにまだ伝説と化してしまったyumikaの人気ほどではないが、1年目にしてはとてもすごい人気である。もしかしたら二人のファンを足したら1年目でyumikaのファンだった人の数を抜いているかもしれない。

 natuのコンサートの帰り。yumikaの熱狂的ファンであった結ら女子高生四人組が歩いている。

 「今日のnatuもさぁ、やっぱ格好良かったよね。」
 「っていうか、いつも最高じゃん。」
 「だよね。」
 「でも、私はkumi派だからなぁ。」
 「そんなの関係ないよ。どっちも良いよ。」
 「そうそう。」
 「来週はさぁ、kumiのライブ行くよね。」
 「うん。当たり前じゃん。」
 「行く行く。」
 「とりあえずさ、その前に期末頑張ろうよ。」
 「もう。ホント、テストなきゃなぁ。」
 「だよねぇ・・・」

 このように、二人のライブをはしごするファンが大勢いる。そしてもともとはyumikaのファンであったというパターンが多いのだ。

 
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