A voiceprint

　看護師の立花はお昼ご飯を患者たちに配り終えると自分の休憩時間になった。食事をしに食堂へ向かう。

　食堂では本日の定食を注文する。待っている間に席を見回すとたまたま仲の良い外科担当の吉田を見つけた。一人でガツガツ食べている姿を見てからかい半分に向かった。

　「ヨッシー！」
　「おぅ、朋やんか。」
　「今、一人で食べとるん？」
　「そうや。見てわかるやろ。」
　「さびしいやろ？友達おらんのやなぁ」
　「ほっとけー。」
　「まぁまぁ。私と一緒に食べん？」
　「ま、ええけど。」
　吉田の前の席に座り向かい合った。

　二人とも関西出身のため、普段は関西弁であった。立花は仕事のときは標準語でしゃべるように心がけているが、吉田は関西弁を誇りとしており決して標準語ではしゃべらない。

　「ヨッシー、実はな、話があるんよ。」
　「おぅ、何や？」
　「あのな、濱野さんの事何やけど。」
　「あぁ、あの子か？・・・で、何や？」
　「正直、どうなん？」
　「どうなん？って？」
　「うん。あの子、助かるんかなぁって？」
　「うーん。・・・そうやなぁ。無理しなければ当分問題ないとは思うんやけどなぁ。お前、知っとるやろ。あの子に一致する血液と心臓の人間は何百万人に１人の確率や。わかってるやろ？」
　「やっぱ、ドナーが出てこんと難しいん？」
　「そうや。こればっかりは気長に待つしかないんや。」
　「そうかぁ。」