A voiceprint
　月子にとってドナーが現れないことには何も始まらなかったが、いざ手術ということになれば安心するできる要素があった。

　吉田は若くして心臓外科医のベスト10に入るほどの知名度で、こと手術に関していえば全国的に３本の指に入るかもしれないほどの器用さと判断力があった。手術の数こそまだ千回も満たない程度であったが、とにかく器用でかつ丁寧な仕事をするので自分のミスによるやり直しをすることは全くなかった。そのため、月子の複雑だと思われる手術もやれる自身は持っていた。

　しかも関西人独特のボケとツッコミも心得ていて面白くて子供にも人気がある。そのため全国から彼を慕って来る客は多かった。
　
　立花はそんな彼の仕事ぶりに尊敬していたが、ズボラで家事が一切できず、しかも面白い＝たまに子供っぽいところもわかっていて、カレシ公認だとか、面と向かって好きと言う事は言わなかったが、一生懸命に彼の相談役になったり、お互いのないところを支えあっていた。そして要所要所は鋭いツッコミで容赦しない。

　「そういえばな、あとな、患者さんに対しては関西弁辞めた方がええよ。」
　「何でや？」
　「吉田先生のしゃべり方ってみんなアホっぽーいって言ってたから。」
　「やかましいわ。お前の方が標準語と使い分けとんのが白々しいで。」
　「あら、そんなことないですわよ。吉田先生。」
　いたずらっぽく立花は挑発的な目で吉田を見る。しかしめいいっぱい無理をしてるような笑顔を忘れない。
　
　「もう、ええわ。」
　吉田は半分すねた様子でご飯をどか食いする。その様子を見ていた小悪魔娘はさらにニタニタ笑いながら食べるのが遅い吉田を食べ終わるまで待っていた。

　


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