A voiceprint
 良太は笹野と製薬会社社長の園田、そしてその部下と共にCMの仕事を兼ねて食事を酌み交わすことになっていた。

 実は事務所が経営的に立ち直ったのは園田製薬のCMにnatuとkumiが採用されたことが大きいのである。新人として売り始めた2人がここのCMに出ることによって全国区の歌手になり、CDの売り上げが良くなったのは確実にCMに曲が毎回使われることに起因している。yumikaの影響ももちろん大きいのだが、園田製薬なしには語れなくなっていたのだった。 

 「園田社長はなかなかお酒強いから・・・。まぁどうぞどうぞ。」
 笹野はすでに上機嫌で園田に酌をした。

 「あぁ、どうも、どうも。おっとっとこの辺で。」
 「それにしても、社長には本当にお世話になりっぱなしで、もう本当にうちの事務所は助かってますよ。」
 「いやいや、こちらこそ人気の高いアーティストを、独占的に使わせて貰ってますからねぇ。お互い様ですよ。」
 園田も上機嫌であった。
 
 部下の男も社長を2人を相手にデータで話す。
 「はい。natukumiさんを起用してから特に美容品の販売が今期は4割近くも増えてますから、本当にありがたいことです。」
 「そうだよな。笹野さん、本当にありがたいことですよ。」
 「ありがとうございます。」
 「お宅の事務所は優秀な人が実に多いですね。」
 「いやぁ、少数精鋭で頑張ってますよ。この鷲野君がかなりの努力家で、去年の事件からよく頑張ってここまで立ち直らせてくれましてね。実はnatuとkumiをここまで育てたのも彼でしてね。」
 上機嫌な笹野は良太に対してほめまくる。園田も合わせる。
 
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