A voiceprint
 その伝説の歌姫が月に数度行うライヴは発売日にほぼ完売してしまうという凄さを持っていた。

 ミリオン歌手がもともと大きな会場で歌うこともなく、せいぜい数百人規模のホールでしか歌わないのだから当然のことかもしれない。もちろんテレビもシャットアウト。ライヴ形式も非常に変わっていた。

 歌い終わるとおとなしくなってしまうため、曲と曲の間は司会者をたてなければならなかった。その司会者は黒川が昔から知っていたかけがえのない後輩で鷲野良太という期待の新人プロデューサーだ。yumikaが良太以外の司会だと舞台の上で緊張してしまって何も話せないからである。

 しかし歌を歌うときのyumikaは人が変わったように「伝説の歌姫」になる。

 疲れている人の心を癒す力があり、CDなどで誰もが彼女の歌を聴いて癒されていたが、特にステージの彼女の姿を見た者はその姿にも癒され、魅了されるのである。

 もちろん初めに魅了されたのは黒川だった。黒川の勘は大当たりで、yumika&黒川の天才コンビによって音楽界の一大革命がなされたといって過言ではない。
 
 しかしその期間はたった1年半の出来事である。

 なぜなら・・・。
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