A voiceprint
 専門的な音楽番組でも辛口批評家は辛らつに非難したりしていたが、何か心をひきつける曲がとにかく良いなどという意見も多く、本当にリスナーの意見はさまざまであった。町中新曲が至る所に流れている。
 そこには「悲しみの歌」初登場1位確実と知らせるお知らせもある。実際に「悲しみの歌」の売り上げランキングは2位以下を引き離しダブルスコアで圧勝していた。
 それを知った良太は心の中で満足しながらも、これからの不安も抱いていた。そしてその不安というものが予想だにできない形で現れることになるとは思っても見なかった。
 
 「正直僕もこの歌はあまり好きではなかったけど、それでもnatuの曲は今回も一位をとった。応援してくれるファン。ありがたいといつも思う。yumikaが失踪してから一年。今年の音楽業界はnatuとkumiの年になっていた。僕にとってはとても幸せなことだったが、この悲しみの歌が大きな事件の幕引きになろうとは誰も気づかなかった。この僕でさえ全く・・・。」

 良太の不安は黒川とyumikaが今、何をしているのかということなのだが、実は黒川はこれから再び世に出る準備を着々と進めていた。

 しかし黒川がこれから出そうとしている曲は、世界を震撼させる曲であるのは言うまでもない。

 
< 22 / 34 >

この作品をシェア

pagetop