A voiceprint
　おどおどしたyumikaだったが、容赦ない質問攻めに会う。
　「yumikaさんは黒川氏が薬物密売の首謀者であるということはご存知だったのですか?」
　「あなたも薬物をしている可能性はないのでしょうか?」
　「これからyumikaさんは活動されるのですか?」
　「黒川さんに対してコメントをお願いします。」

　質問攻めにあい、揉みくちゃにされるyumika。どうすることも出来ずつぶれそうになったときに初めて人前で大声を出した。
　「いやーーーーーーーーっ!」

　一瞬記者たちがたじろぐとyumikaは全速力で逃げた。そして近くに止まっていたタクシーに乗り込んだ。

　事務所には事務所の社長である笹野泰作や良太らが、詰め寄る報道陣を入り口で制止する。
　「押さないで!待ってください。」
　「笹野さんどういうことか説明してください。」
　「薬物斡旋をしていたと言いますが、本当なんですか？」
　「えー、ですから、我々と致しましては早急に調べ報告をしますので、それまで待って頂きたい。本当に全くわからないのです。」
　「本当なんです。ただ黒川さんに限ってそんなことはないと僕は言いたい。」

　そこへタクシーからかけこむyumika。記者達の後ろを通ってすぐに笹野に言い寄った。
　「笹野さん、鷲野さん、どういうことですか？」
　「yumika。いいからちょっと来なさい。」
　笹野はyumikaを引っ張って事務所の中に入っていった。
　
　「yumikaさん、黒川さんの逮捕についてお聞かせください。」
　「すみません。所属アーティストとは何の関係もございません。」
　「そんなこといっても、黒川さんは彼女のプロデューサーでしょう。」
　「申し訳ございません。」
　良太はとにかく制止していくしかなかった。本当に黒川晋の疑惑については全く身に覚えがないのだから。

　中ではyumikaが笹野の胸で大泣きしてしまった。笹野はこんなに泣いているyumikaは初めてで抱きしめてあげることしか出来なかった。
< 7 / 34 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop