【完】 Squall ~いくつもの恋をして~
「温めておくからお風呂入っておいで。泊まっていくでしょ?」
何でもなかったように声をかけ
頷く課長のスーツの上着を受けとると着替えを渡した。
日本人は着ないベストを着用する彼のスタイルもスキ。
外出がない時はカジュアルだけどハイセンスなスーツ姿もスキ。
日本の風習の中でも頑なに守る自分の信念と個性
同じである事を真似ようと必死になった私と違うところ。
「理沙、ルールの中で楽しもうよ。何でも同じことに安心していたら成長を忘れてしまうよ」
それはファッションについて言ったわけじゃなく
すべての面においてなのだけれど
見よう見まねで生活してきた私には大きな布石だった。
課長が来てからの私は、本来の自分を少しずつ取り戻した。
ボストンから来たアメリカ人やイタリア人、いろんな国の人が往来するオフィス。
彼らはスタイルの変更はまったくなかった。
だけど日本人のわたしは、日本人になろうと不必要な努力をしていたのかもしれない。