【完】 Squall ~いくつもの恋をして~
「浅木さん、アメリカのキャリアウーマンって感じでステキ」
「服だけじゃなく立派な仕事頼むぜ」
中村先輩は笑いながらもやっぱり日本とは違うよな。
でもいいよな。
すっかり習慣のようにわたしの額をスリスリとこする。
「おまっ 今日デカイな」
ハイヒールも履くようになった。
「電車のつり革が顔面に当たるの」
私のボヤキにも額は大丈夫だったかとまた額をスリスリ。
「前髪おろそうかなぁ」
「ダメだ。それ禁止。社内ルールに載ってた」
「え?」
「浅木理沙、前髪禁止って第28章14項だったかな」
「そうよ。私の前髪必須が13項だからその下にあったわよ」
篠先輩が自分の前髪を整えながら笑う。
「眉毛も綺麗よね…よく出来るね。私なんかいつもびっこよ」
「びっこ?」
「あぁ…左右が違うって意味」
「ちんばとも言うの」
「漢字ありますか?」
「どうだろ。あははは」
電子辞書で調べるとどちらも同じ漢字だった。
そうやって憶えていくのが偉いって篠先輩まで私の額をスリスリ。
今に光るかもねなんて笑いながらデスクへ戻った事を思い出した。