【完】 Squall ~いくつもの恋をして~
「心配かけたね」
「あぁ。ものすごい心配して眠れなかった」
「ごめんね」
「そんなものは杞憂だったようだな」
「杞憂?」
あと何回書くかな。
小さく笑ったみやちが、メモ帳に杞憂と書き込み
あれこれと心配すること、取り越し苦労と教えてくれた。
「absurd fear」
私が発音しながら単語を記す。
真面目な会話だったのに
「課長とあさりの疲労感漂う姿は尋常じゃねぇぞ」
「え?尋常?」
何となく意味は想像できたけれど
やっぱりみやちは尋常と書いて
普通じゃねぇって意味だと大笑い。
そして書こうとした私の手を止め
「not ordinary」
そのぐらいの単語はわかるんだよって私の額をパチンと叩いた。
「あさりはもう日本語を覚える必要がねぇか…」
「なんで?」
「ボストンに帰るだろ」
「英語しか話せなかったらみやちが困るでしょ」
「だな。ここまでの苦労が水の泡だ」
言ってからわかるか?って顔をまたしたから
わかるわかるって何度も頷いた。