リフレクター


とにかく、無我夢中だった。


「え、と……確か119だったよな!」


携帯を取り出して通話メニューを出す。


しかし、慌てているせいか、ボタンがうまおせない。



「アガッ……ガアァァ!!」


「うわっ!」


予想だにしなかった。


その人は乱心したのか、俺めがけてナイフを振りかざしてきた。


「おいおい、これは救急車じゃなくて、警察よんだほうがよくね?」


「ガ……ハハ……。…グッ!!」


何やら奇妙な呻き声だ。


しばらくぼーぜんと止まっていると、突然倒れ出した。


「あ、ちょ!」


慌ててその人を支える。


しかし、俺は大事なことを忘れていた。


その人はナイフを持っていた。




「……くっ」


気がついた時にはもう遅い。


胸元が熱い。


俺は意識が遠退くのを感じた。


地面に倒れ、なんとか顔だけでも拝んでやりたかった。


強引に体をひねり、その人の顔を見た。


「…………。」


あ、そう。


オマエか。
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