委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
委員長の素顔
 梅雨が明け、期末試験も終わり、後は夏休みを待つばかり。と言っても、今年の夏休みはさほど楽しみではない。なぜなら、夏期講習とやらに行って勉強しなければいけないからだ。なんせ来春は大学の入試を控えているから、仕方ないんだけどね。


 そんなある夏の日の学校からの帰り道、何やら雲行きが怪しくなって来た。どす黒い雲が空を覆い、辺りは夕暮れのように暗くなった。

同時に冷んやりとした湿った風が吹いて来て、涼しくていいや、なんて呑気な事を考えたのも束の間、ゴロゴロと雷が鳴りだしたと思うと、すぐさま大粒の雨がボタボタっと落ち出した。


 僕は急いでバッグのファスナーを開き、中から紺色の折りたたみ傘を取り出した。口うるさい母から言われ、バッグの中には常に折りたたみ傘が入っているんだ。

普段は、その分バッグが重くなるから嫌なんだけど、この時ばかりは母に感謝したい気持ちだった。


 僕が傘を差し終えた頃には、早くも雨は本降りになっていた。もし少しでももたついていたら、かなり濡れてしまったと思う。

 ホッとしていると、僕の横を誰かが通り過ぎて行った。それは、頭に白い手を乗せ、小走りに走って行く一人の女子高生だった。

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